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京都地方裁判所 昭和50年(わ)229号 判決 1975年10月16日

法人所在地

京都府綾部市神宮寺町東谷四番地

法人名称

医療法人 英仁会

右代表者住居

京都府綾部市神宮寺町東谷四番地

代表者名

夏山英一

本籍

京都市右京区花園天授ヶ岡町二七番地の一一

住居

京都府綾部市神宮寺町東谷四番地

医療法人理事長、医師

夏山英一

大正一四年三月一日生

右医療法人英仁会及び夏山英一に対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は検察官忠海弘一出席のうえ審理して次のとおり判決する。

主文

被告医療法人英仁会を罰金五〇〇万円に、

被告人夏山英一を罰金三〇〇万円に、それぞれ処する。

被告人夏山英一において右の罰金を完納できないとき金二万円を一日に換算した期間、同被告人を労役場に留置する。

理由

(罪となるべき事実)

被告医療法人英仁会は京都府綾部市神宮寺町東谷四番地に本院、兵庫県姫路市御立一三三四番地の一に分院をおき主として産婦人科の医療業務を営む法人であり、被告人夏山英一は右被告医療法人英仁会の理事長としてその業務全般を統轄掌理しているものであるが、被告人夏山英一は被告医療法人英仁会の業務に関し法人税を免れようと企て、

第一  昭和四六年一一月一五日から同四七年三月三一日までの事業年度において、被告医療法人英仁会の真実の所得金額は四、三四〇、〇二四円で、これに対する法人税額は一、四八一、四〇〇円であつたのに、診療収入の一部を除外し、これで架空名義の簿外預金を設定するなどの不正な方法によりその所得の一部を秘匿したうえ、同四七年五月三一日福知山市字笹尾小字横サ一〇六の一所在の所轄福知山税務署において、同税務署長に対し、所得金額が三七九、九三二円で、これに対する法人税額が一〇二、〇〇〇円である旨虚偽過少な法人税確定申告書を提出し、よつて正当な法人税額と申告にかかる法人税額との差額一、三七九、四〇〇円を免れ

第二  昭和四七年四月一日から同四八年三月三一日までの事業年度において、被告医療法人英仁会の真実の所得金額は三九、三一七、五四九円で、これに対する法人税額は一四、一七三、六〇〇円であつたのに、前同様の不正な方法によりその所得の一部を秘匿したうえ、同四八年五月三一日前記福知山税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一四、二八六、九七二円で、これに対する法人税額が四、九七四、七〇〇円である旨虚偽過少な法人税確定申告書を提出し、よつて正当な法人税額と申告にかかる法人税額との差額九、一九八、九〇〇円を免れ

第三  昭和四八年四月一日から同四九年三月三一日までの事業年度において、被告医療法人英仁会の真実の所得金額は六三、八五八、八八六円で、これに対する法人税額は二三、一八四、二〇〇円であつたのに、前同様の不正な方法によりその所得の一部を秘匿したうえ、同四九年五月三一日前記福知山税務署において、同税務署長に対し、所得金額が二五、八九三、七一八円でこれに対する法人税額が九、二三二、一〇〇円である旨虚偽過少な法人税確定申告書を提出し、よつて正当な法人税額と申告にかかる法人税額との差額一三、九五二、一〇〇円を免れたものである。

(証拠の標目)

一、被告人夏山英一の当公判廷における供述

一、被告人夏山英一の検察官に対する供述調書(検甲第六六号)並びに同被告人作成の確認書二通(検甲第二九、第三〇号)及び同被告人ら作成の上申書(検甲第六五号)

一、収税官吏作成の被告人夏山英一に対する質問てん末書八通(検甲第五七ないし第六四号)

一、収税官吏作成の亀井豁に対する質問てん末書七通(検甲第五、第六、第一三、第一五、第一六、第一八、第二八号)

一、亀井豁の検察官に対する供述調書(検甲第五〇号)並びに同人作成の確認書一四通(検甲第九ないし第一一、第一七、第二〇ないし第二二、第二四、第二五、第三五、第四〇、第四一、第四四、第四六号)

一、福知山税務署長作成の法人税確定申告書謄本三通(検甲第二ないし第四号)

一、収税官吏作成の、能登ムツ(検甲第七号)、楠和美(同第八号)、金子義雄(同第一九号)、河北ゑい(同第二三号)、赤井明代(同第三七号)、大槻由与(検甲第四七号)に対する各質問てん末書

一、大槻由与作成の確認書二通(検甲第三一、第四八号)及び申述書二通(検甲第三二、第四九号)

一、大槻孝七(検甲第三三号)、吉崎運美(同第三八号)、藤田ハツ(同第三九号)各作成の供述書

一、八木宏作成の確認書(検甲第四二号)

一、収税官吏作成の査察官調査書八通(検甲第一二、第一四、第二六、第二七、第三四、第三六、第四三、第四五号)

一、被告法人に関する法人登記簿謄本二通(検甲第六七、第六八号)

一、押収の現金出納調書二綴(昭和五〇年押第二〇九号の一、五)、外来金銭簿三綴(同号の二ないし四)及び借用証書六枚(同号の六)

(法令の適用)

一、被告医療法人英仁会に対し

判示第一ないし第三の各所為につき、いずれも法人税法一六四条一項、一五九条一項

併合罪処理につき、刑法四五条前段、四八条二項

二、被告人夏山英一に対し

判示第一ないし第三の各所為につき、いずれも法人税法一五九条一項(いずれも所定刑中罰金刑選択)

併合罪処理につき、刑法四五条前段、四八条二項

労役場留置につき、刑法一八条

(弁護人の主張に対する判断)

弁護人は、本件各行為はその目的、行為態様等に照らして実質的に考察すると、いずれも法人税法一五九条一項の構成要件が予想する可罰的程度に達せず実質的違法性を欠くものであると主張する。

しかしながら、本件各行為は連続する三か年度にわたる法人税ほ脱行為であり、そのほ脱合計額は二、四〇〇万円を上回り、その各行為ごとのほ脱率もいずれも六割を超えていることを考えると、弁護人主張のようなその動機目的、行為の態様その他諸般の事情を考慮に入れても、本件各行為が可罰的違法性を欠くものとは認め難く、弁護人の主張は採用できない。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 家村繁治)

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